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Tokyo Art Book Fair 2025

東京アートブックフェア2025に足を踏み入れたとき、そこには特別な高揚感がありました。想像力が大きな渦となって集まり、毎年何千人もの来場者が思いがけない出会いを求めて歩き回る場所です。 Hidden Champion の温かい招待により、Tokyo WALLS はフェアの第1週(12月11日〜14日)に参加する機会を得ました。会場には、出版社、アーティスト、国内外の出展者など281組が集まり、それぞれがページの束の中に自分たちの世界を携えていました。その圧倒的な多様性の中で、Tokyo WALLS もまた、Hidden Champion が放つストリートカルチャー特有の空気に照らされながら、ささやかながら自分たちの場所を見つけていました。 Hidden Champion は長年にわたり、都市文化のシーンを支えてきた存在です。スケートボード、BMX、サーフィンといったアクションスポーツ、そしてアーバンアートに焦点を当てた書籍や雑誌、数々のコラボレーションを通して築かれてきた名前。そのブースを共有できたことは、とても自然であり、同時に大きな刺激でもありました。フェアの期間中、私たちは彼らのチームと出版や写真、そして動きや文化、アイデンティティを紙の上に定着させるという繊細な技術について、数多くの意見を交わしました。スタイルも歴史も異なりますが、根底にある直感は同じです。街のエネルギーと、それを形づくるアーティストたちに舞台を与えること。 そして、このフェアで最も大きな意味を持ったのは、Tokyo WALLS の本に登場するアーティストたちに新しい光が当たったことでした。来場者との会話は自然と本そのものを越え、そこに登場するアーティストたちへと広がっていきます。これまでの展覧会、これからのプロジェクト、そしてそれぞれのスタイルが持つ独自性。訪れた人々が手に取ったのは、単なるページではなく、その背後にある人であり、物語でした。本は入り口に過ぎず、読者の手に残るのはアーティストの個性の断片なのだと感じさせる瞬間でした。 この象徴的なフェアで Hidden Champion と並んで立てたことは、Tokyo WALLS にとって大きな学びであり、成長の機会でもありました。そして週末が終わる頃、私たちは多くの記憶とともに、改めて確信を持ち帰りました。本という存在は、人と人をアートで結びつける最も美しい方法のひとつであるということを。

Meet Your Art Festival 2024

その年の初めに参加した福岡アートブックフェアでの経験を経て、私たちにはひとつの確信が生まれていました。出版という営みの本当の魔法は、本が読者の手に渡り、その目と好奇心に触れる瞬間にこそ起きるということです。そこにあるのは、ただ作品を見せることではなく、人々の声を聞き、言葉を交わし、初めて出会う読者が私たちの本にどのように反応するのかを知る時間でもあります。 そんな中、Meet Your Art Festival 2024 が天王洲アイルで開催されると知ったとき、私たちはすぐに参加を決めました。このフェスティバルは、福岡で始まった旅の続きとして、まさに理想的な舞台に思えたのです。今度は自分たちの拠点である東京で、新しい観客と出会う機会になるはずでした。 この機会を記念するため、私たちは少し変わった決断をしました。通常であれば9月に発表する**『Tokyo WALLS vol.09』の発売をあえて延期し、フェスティバルに合わせて10月中旬**に発表することにしたのです。そして、その待ち時間は十分に価値のあるものでした。この巻は、これまでのシリーズの中でも特別な一冊となったからです。 本書では、二人の友人であり、それぞれの世界で大きな存在感を放つアーティスト――HAROSHI と HxSを特集しました。リサイクルされたスケートボードから魂の宿る彫刻作品を生み出す HAROSHI。唯一無二のソフビ作品で広く知られる HxS。彼らの過去の展覧会、それぞれの個性、そして二人が共作した希少な作品までもが、この一冊の中に収められています。さらに Tokyo WALLS は、彼らのスタジオにも足を踏み入れ、作品が生まれる空間の空気感を写真として記録する機会にも恵まれました。 この特別な巻のために、私たちは日本のヴィンテージ怪獣ポスターから着想を得たオリジナルのダストジャケットを制作しました。二人のコラボレーションによるソフビ作品をモチーフにしたデザインで、両アーティストの存在を一つに結びつけたコレクターズアイテムとしては、おそらく初めての試みだったのではないかと思います。 フェスティバルでのリリースは、私たちの想像を大きく上回る反響を呼びました。会場では長い列ができ(会場内でちょっとした話題になるほどでした)、二人のアーティストが持つ強い引力を改めて感じさせる光景となりました。新刊に加え、フェスティバルでは過去の Tokyo WALLS のバックナンバーも持ち込み、すでに完売していた本を手に入れる貴重な機会として多くの来場者に喜ばれました。 しかし何よりの宝物は、人との出会いでした。コレクターやアーティスト、そして初めて Tokyo WALLS を知る来場者たちとの会話。その一つひとつの交流が、私たちがこの活動を続ける理由を改めて思い出させてくれました。そうした出会いの中で、Tokyo WALLS は単に成長するだけではなく、呼吸を続ける存在となっていきます。ページに刻まれた物語を信じてくれる人たちによって、次の章へと運ばれていくのです。

福岡アートブックフェア 2024

そこには、Tokyo WALLS を福岡へ持っていくという発想に、どこか抗えない魅力がありました。街の中から自然に創造性が湧き上がってくるような都市だからです。2024年、太宰府天満宮という静かな空気に包まれた場所で、福岡アートブックフェアの第1回開催が発表されたとき、私たちはすぐに、これから始まる冒険の前触れのような静かな高揚を感じました。 福岡は長く、新しい表現が生まれる土壌として知られてきました。ここから生まれた KYNE は、日本を越えて広がる存在へと成長しました。ファッション、デザイン、食、そしてゆったりと流れる午後の時間――そうした魅力が混ざり合うこの街は、私たちの活動にとって自然な舞台でもありました。だからこそ、このフェアの存在を知った瞬間、ただ参加するだけではなく、福岡から生まれる何か意味のあるものを作りたいと強く思ったのです。 ただ一つ足りなかったのは、時間でした。出展が決まってからフェアの開催まで、残された時間はわずか3か月。しかし偶然というものは、不思議なタイミングで重なるものです。ちょうどその頃、福岡市美術館では KYNE による初の大規模個展が開催されており、地元のストリートアート・コミュニティとも、すでにいくつかの小さな接点が生まれていました。 それだけで十分でした。そこからひとつのアイデアが生まれます。『Fukuoka WALLS』。Tokyo WALLS を形づくってきた方法をベースにしながら、この街ならではの空気と感覚を取り込んだ新しい一冊です。 そこから始まったのは、3日間の短い旅でした。濃密で、喜びに満ちた、忘れがたい時間。Kyne、Noncheleee、Nyke とともに、それぞれの世界を可能な限り追いかけました。舞台は美術館の展示室から、小さなショップ、カフェ、そして街の奥まった場所へ。時には裸足で下水道に入り、遠くの海岸まで足を伸ばすこともありました。そこにある一瞬一瞬が、撮るべき写真であり、福岡の創造的なエネルギーを記録する断片となっていきました。 『Fukuoka WALLS』(300部・202ページ)は、こうして福岡アートブックフェアで無事に初披露されました。反応は、私たちの想像を超えるものでした。初日には長い列ができ、まるでこの本そのものが待ち望まれていた来訪者であるかのようでした。何より嬉しかったのは、多くの部数が地元の人たちの手に渡ったことです。この本のページは、まさに彼らの街に属するものだったからです。 そして最後には、まるで完璧なエピローグのような出来事もありました。数名の幸運なコレクターが、Kyne と Nyke に直接サインをもらう機会を得たのです。 Tokyo WALLS にとって、このフェアは単なる展示の場ではありませんでした。それは祝祭のような時間であり、アートという共通の言語で結ばれた二つの都市――東京と福岡――が出会う場所でもあったのです。

STICKERS:東京で生まれたユニークな展覧会

すべては2023年5月、アーティスト VLOT とのいくつかの会話から、静かに始まりました。彼は当時、ある国際的なプロジェクトに没頭していました。テーマは「ステッカー」。世界中の街で、誰の許可も求めることなく自然発生的に広がっていくこの文化を讃える映画の制作です。 ほどなくして、まるでごく自然な流れであるかのように、私たちの考えは一つの方向へと収束しました。単にステッカーを並べる展示ではなく、ストリートアートが都市を“損なう”ものではなく、むしろ都市を照らす存在であることを示す展覧会をつくろう――そう決まったのです。 今回のキュレーションには、三つのシンプルな目標がありました。一つ目は、ステッカーアーティストたちのコミュニティを集めること。多くの作家は、互いの作品を街の壁で見かけることはあっても、実際に顔を合わせたことはほとんどありませんでした。二つ目は、ステッカーやストリートアートについて、一般の観客との対話を生み出すことです。「違法」や「落書き」といった言葉から始まるのではなく、まずは好奇心から始まる会話を。そして三つ目は、こうした作品をあえて伝統的なアートギャラリーという場に持ち込み、ステッカーを本来の姿で見てもらうことでした。そこにあるのは、アイデンティティやユーモア、反骨精神、そして時に繊細なメッセージを宿した作品なのです。 Instagramで行った参加募集の反響は、私たちの想像をはるかに超えるものでした。世界中から500名以上ものアーティストが応募し、アマチュアから著名な作家まで、多様なクリエイターが作品を送り届けてくれました。そして展覧会が終わって数か月が経った後も、ギャラリーには封筒が届き続けました。その一つひとつが、この企画がどれほど多くの人の心を動かしたかを物語っていました。 これは東京で初めてとなる規模のステッカー展でした。多くのアーティストにとって、この展覧会は、自分のスタイルや声を自由に表現し、世界でも特に刺激的な都市の一つである東京で発信する、貴重な機会となったのです。 準備は想像以上に過酷で、時にはまさに“ヘラクレス級”とも言える作業でした。展示構成の設計、ギャラリー空間の構築、そして寄せられたすべての作品の整理と記録。具体的には、到着確認を行い、ステッカーを一枚ずつスキャンし、アーティストを特定する――そんな作業を6か月間、ほぼ毎晩続けていきました。 そして迎えた最終週、少人数ながら頼もしいチームが集まりました。私たちは力を合わせ、約100枚のパネル、アーケードゲーム筐体、防 riot 装備、さらには数々のオブジェクトに、何千枚ものステッカーを貼り込んでいきました。作業は時に無茶とも言えるものでした。たとえば、たった二組の手で巨大なボードの束を持ち上げるような場面も。それでも不思議とすべてが噛み合い、2023年12月9日(土)のオープニングに間に合う形で完成へと辿り着きました。 Night Out Gallery で行われたオープニングレセプションは、まさに特別な瞬間でした。これまで何年も街の壁で見てきたタグや名前に、ようやく“顔”が結びついたのです。アーティストたちは宝物を交換するかのようにステッカーを交換し合いました。会場にはコミュニティウォールが設けられ、来場者は誰でも自分のステッカーを貼ることができ、また用意された無地のステッカーにその場で描いて参加することもできました。 2週間の会期のあいだ、会場には絶えず人が訪れました。友人、家族、そして好奇心に導かれた来場者たち。展示の空気は最後まで途切れることなく、活気に満ちていました。 そして、その場には確かに何か持続するものが生まれていました。それまで作品を通してしか交わることのなかったアーティスト同士の間に、新しい友情が芽生えたのです。そこにはコミュニティの感覚も育っていました。来場者たちは、創造性が遠い存在でも、限られた人だけのものでもないことに気づきます。むしろそれは、身近で、遊び心にあふれ、誰にでも開かれたもの。ステッカーは誰でも作れる。そして、剥がして貼るその一瞬だけでも、誰もがアーティストになれるのです。 この冒険の記録を残すために、私たちは展覧会の記念として2冊の書籍を制作しました。『Stickers First Edition』(200部・96ページ・各冊にNFCチップを搭載)と、『Stickers Extended Edition』(300部・344ページ)です。 この2冊は、ステッカーアーティストとそのInstagramアカウントをまとめたユニークなインデックスとして機能しています。街でステッカーを見つけたとき、その作者が誰なのかをたどることができる――そんな小さなガイドとしても役立つ一冊です。 Tokyo WALLS は、このプロジェクトを最初の構想から最後の瞬間まで支え続けてくれた VLOT と Night Out Gallery に、心からの感謝を表します。彼らの揺るぎないサポートがあったからこそ、この冒険は実現し、そして何よりも、喜びに満ちた忘れがたい時間となりました。

Tokyo Art Book Fair 2025

There was a certain thrill in stepping into the Tokyo Art Book Fair 2025, a place where imagination gathers in big numbers and where thousands of visitors roam each year in search of the unexpected. Thanks to the generous invitation of Hidden Champion, Tokyo WALLS joined the first week of the fair, held from December […]

Meet Your Art Festival 2024

After our memorable participation in the Fukuoka Art Book Fair earlier that year, something became evident to us: the true magic of publishing happens when books meet the hands, eyes, and curiosity of readers. It was not only about presenting art; it was about listening, exchanging, discovering how our work resonates with people who encounter […]

Fukuoka Art Book Fair 2024

There was something irresistible about the idea of bringing Tokyo WALLS to Fukuoka, a city where creativity seems to rise naturally from the streets. When the Fukuoka Art Book Fair announced its first edition in 2024 at the serene Dazaifu Tenmangu shrine, we immediately felt that quiet electric thrill that precedes great adventures. Fukuoka has […]

STICKERS: A Unique Exhibition in Tokyo

It all began rather quietly, in May 2023, with a few conversations exchanged with the artist VLOT. At the time, he was immersed in an ambitious international project: a film about stickers, a hymn to this culture that blossoms everywhere without asking permission. Very quickly, as if it were the most natural thing in the […]

“Activity Report”, 東京風紀委員会による展覧会

約1年にわたる準備期間を経て、東京風紀委員会による初のアート展「Activity Report」が、2022年12月16日から25日にかけて Night Out Gallery にて開催されました。本展のために制作された10点のオリジナル作品が展示され、委員会が描く独自のビジョンが初めて一般に紹介されました。これは、数年前に東京の路上から始まった彼らの表現活動の「第一章」を締めくくるものとなりました。 魅力的な存在感を放つ委員会メンバー・Uyu は、独特のステッカー「ダメよ。ゼッタイ。」で人々の注意を引きつけてきました。問いかけはないのに、答えだけが提示される。その不思議な構図の裏に、Uyu は私たちに社会への問いを投げかけています。私たちの身の回りには、行政や企業など“権威”による数多くの指示や警告が存在し、それらがあたかも社会の「正しさ」や「一般的な価値観」を形づくっているかのように見えます。しかし、価値観は急速に変化する一方、法律や制度はそう簡単には変わりません。では、私たちはどのルールに従うべきなのでしょうか?   東京風紀委員会展の舞台裏 Tokyo WALLS: Curation, Coaching, and the Making of a Debut 「Activity Report」の物語は、企画として形になるよりずっと前――東京風紀委員会がまだ一度もギャラリーに足を踏み入れたことがなかった頃に始まっていました。その原点は、東京の街角にありました。ふと見過ごされてしまうような小さなディテールの中に、彼らの存在の手がかりが潜んでいたのです。 最初のサインはステッカーでした。端正で、正確で、どこか見覚えのあるデザイン。まるで都市の景観をかたちづくる公式のビジュアル群のひとつであるかのように自然に溶け込みながら、しかし確かに“何か”が違う。違和感はごく控えめで、しかし意図的。そこに描かれたキャラクター「リュウ」には、日本的な魅力が宿り、思わず足を止めてしまう。――ここには、ちゃんと考えている誰かがいる。そう感じさせる表現でした。 その気づきが、最初のつながりとなりました。Tokyo WALLS がコンタクトを取ると、彼らはまだ「作品」と呼ぶ以前の段階で、直感的に育てていた世界観を見せてくれました。そこから始まったのは、数か月にわたる対話です。意図やコンテクスト、技法、そしてまだ彼らを知らない観客への伝え方につい て、計画的に、あるいは自然発生的に交わされた数多くの話し合い。レッスンというよりは、アイデアがぶつかり合い、研ぎ澄まされ、時には捨てられ、作家自身が自分の表現を距離を置いて見つめ直すための「創作の現場」そのものでした。 そうした積み重ねの中から、少しずつ物語が輪郭を帯びていきました。Tokyo WALLS は彼らに、メッセージを言語化すること、技法を広げること、そしてストリートの“断片”をつくる存在ではなく、物語を紡ぐアーティストとして自身を捉えることを促しました。彼らにはすでにひとつの世界があった。Tokyo WALLS の役割は、その世界が前に進むための燃料と構造、そして時折必要な後押しを与えることでした。こうして、「Activity Report」はゆっくりと姿を整えていきました。 準備が本格化したのは、最後の数週間。深夜の微調整、制作と物流の段取り、スタジオとギャラリーを行き来する日々。Tokyo WALLS は制作費の一部を支え、ギャラリーとの調整を担い、作家の個性を損なうことのない展示空間を実現するために奔走しました。 そして迎えたオープニング。扉が開くと同時に、空間は一気に人で満たされました。友人、アーティスト、コレクター、そして興味を抱いた来場者たち。会場全体が、まるで街の延長線であるかのような熱量に包まれました。その空気感ははっきりと伝えていました――「何かが起きている」と。数日後には、すべての作品が抽選で完売。初のギャラリー展としては、成功という言葉を超えた、まさに「突破口」と呼べるものでした。 大きな節目 「Activity Report」は、東京風紀委員会がアンダーグラウンドから抜け出し、より広いアートシーンへと踏み出す転換点となりました。この展覧会は、単なる露出の増加にとどまらず、表現への自信や方向性そのものを大きく変えた出来事でした。 その後の数か月間、2人は東京各地の会場で新作を発表し、彼らが形づくり始めていた世界観をさらに広げていきました。フォロワーも増え、活動の影響は国内にとどまらず、最初の着想源となった東京の街を越えて海外にも届くようになりました。 Tokyo WALLS にとって、これはまさに使命の核心です。日常の都市空間の中に潜む可能性を見つけ出し、アーティストが自らの声を確立するための支えとなり、その歩みが前へ進むための推進力を提供すること。 東京風紀委員会にとって「Activity Report」は終着点ではありません。むしろ、いまも続く物語の「最初の本章」だったのです。

都市の断片

2022年3月、Tokyo WALLS は東京の都市風景に長く“署名”を残してきた7名のアーティストを一つの場に集めました。DFace、Atomiko、Jeremy Yamamura、Maws、VLOT、東京風紀委員会、そして Wackozaki。壁画、グラフィティ、ステッカー――それぞれが異なる手法、異なる背景、異なる文化圏から来ており、東京という街と同じくらい多様性に満ちた顔ぶれでした。彼らの軌跡を一つのプロジェクトで交差させ、短い期間ながら強い存在感を生み出すことが、この試みの狙いでした。 Tokyo WALLS は各アーティストに、経年劣化したコンクリートの質感を再現した木板に、ウェットペーストで貼り出すためのオリジナルデザインを制作するよう依頼しました。こうして生まれた作品群は、都市の断片を可搬化したようなハイブリッドな存在となり、彼らが実際に活動してきた環境の質感やゆがみをそのまま写し取る“都市の持ち運べる一部”へと姿を変えました。   制作の過程で、ドキュメントと創作の境界は曖昧になっていきました。そこにあったのは、複製でもなければ従来のアート作品でもない、アーティストたちのストリート実践が形を変えて具現化したピース。風化の表情、ひび割れ、使い込まれた質感――すべてが意図的に作り込まれ、屋外にさらされた時間そのものを仮想的に再現する試みでした。 そして、この“コンクリート片”のような作品群の中で、東京風紀委員会は特別な一作を発表しました。彼らにとって初となる、屋内向けのオリジナル作品です。それは静かでありながら重要な瞬間でした。彼らが育ててきた言語、トーン、物語性が初めてまとまった形で姿を見せ、東京の街中でステッカーとしてしか知られていなかった彼らの“内側”を垣間見る機会となりました。 このコラボレーションは、Tokyo WALLS にとって初期の大きな節目となりました。ストリートを出自とするアーティストたちを、その根を損なうことなく一つの場に結びつけられることを示し、外の都市と内のアートスペースを橋渡しするというプラットフォームの役割を明確にしたのです。 そしてこの2022年3月のプロジェクトは、後に「Activity Report」で大きな飛躍を遂げる東京風紀委員会にとっても、その旅路を支えた“最初の種”の一つとなりました。