その年の初めに参加した福岡アートブックフェアでの経験を経て、私たちにはひとつの確信が生まれていました。出版という営みの本当の魔法は、本が読者の手に渡り、その目と好奇心に触れる瞬間にこそ起きるということです。そこにあるのは、ただ作品を見せることではなく、人々の声を聞き、言葉を交わし、初めて出会う読者が私たちの本にどのように反応するのかを知る時間でもあります。
そんな中、Meet Your Art Festival 2024 が天王洲アイルで開催されると知ったとき、私たちはすぐに参加を決めました。このフェスティバルは、福岡で始まった旅の続きとして、まさに理想的な舞台に思えたのです。今度は自分たちの拠点である東京で、新しい観客と出会う機会になるはずでした。
この機会を記念するため、私たちは少し変わった決断をしました。通常であれば9月に発表する**『Tokyo WALLS vol.09』の発売をあえて延期し、フェスティバルに合わせて10月中旬**に発表することにしたのです。そして、その待ち時間は十分に価値のあるものでした。この巻は、これまでのシリーズの中でも特別な一冊となったからです。
本書では、二人の友人であり、それぞれの世界で大きな存在感を放つアーティスト――HAROSHI と HxSを特集しました。リサイクルされたスケートボードから魂の宿る彫刻作品を生み出す HAROSHI。唯一無二のソフビ作品で広く知られる HxS。彼らの過去の展覧会、それぞれの個性、そして二人が共作した希少な作品までもが、この一冊の中に収められています。さらに Tokyo WALLS は、彼らのスタジオにも足を踏み入れ、作品が生まれる空間の空気感を写真として記録する機会にも恵まれました。
この特別な巻のために、私たちは日本のヴィンテージ怪獣ポスターから着想を得たオリジナルのダストジャケットを制作しました。二人のコラボレーションによるソフビ作品をモチーフにしたデザインで、両アーティストの存在を一つに結びつけたコレクターズアイテムとしては、おそらく初めての試みだったのではないかと思います。
フェスティバルでのリリースは、私たちの想像を大きく上回る反響を呼びました。会場では長い列ができ(会場内でちょっとした話題になるほどでした)、二人のアーティストが持つ強い引力を改めて感じさせる光景となりました。新刊に加え、フェスティバルでは過去の Tokyo WALLS のバックナンバーも持ち込み、すでに完売していた本を手に入れる貴重な機会として多くの来場者に喜ばれました。
しかし何よりの宝物は、人との出会いでした。コレクターやアーティスト、そして初めて Tokyo WALLS を知る来場者たちとの会話。その一つひとつの交流が、私たちがこの活動を続ける理由を改めて思い出させてくれました。
そうした出会いの中で、Tokyo WALLS は単に成長するだけではなく、呼吸を続ける存在となっていきます。ページに刻まれた物語を信じてくれる人たちによって、次の章へと運ばれていくのです。